『家族シネマ』柳美里
- 作者: 柳美里
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1997/02
- メディア: 単行本
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★☆☆☆☆
あまりしっくりこなかった。薄い本なのに読了するのにもずいぶん時間がかかった。表題作「家族シネマ」に関しては次の作品を次の章だと勘違いしたまま読み進んでしまい、違和感を感じて見返したら別の作品だったので「ああ、さっきの作品終わってたんだ……」という。
共感を得られる部分が少なすぎたのが、読み進めるのに苦労した原因かなあ。最近気付いたのだけど、ドラマを見るときは構成や演出なんかに目が行くのに対して、活字になると共感を得ることが大事になるような気がする。共感と言うより「納得し得るかどうか」といった方がいいのかな。だから、今回は気持ちの面であまり納得が出来なかったのだと思う。どこか居心地が悪く、しっくりくる部分が見いだせない。
気になったのは負の面の生々しさで、貧しさやくたびれた描写に関してそれを汚い・気持ち悪いと感じさせる描写をするなあと感じた。ただ、それがこの作家の「説得力」なのだろうとも思う。
作品を心から楽しめると「他も読んでみよう」と感じるけれど、あまりに共感の度合いが低い作品にもまた同じことを感じるんだな、とは思った。というわけでこの作家に関しても、もう1作くらいは読んでみたいと思う。