『GO』金城一紀

GO (講談社文庫)

GO (講談社文庫)

★★★☆☆

恋愛は主人公にとって大きな出来事なのかも知れないけれど、それ以外の面の方が魅力的に描かれていた。親子の関係や友人との関係。著者の血肉として築かれてきたものがそこにあったのだろうなあと思わせる。「在日」として生きてきて得てきたもの、失ってきたもの、彼の根源を形作ってきたものはきっとひとつの恋愛でなくたくさんの「人」との出会いや別れだったんだろう。


自伝的な色の濃い作品として描かれているのかと思って読んだら印象は違って、少年誌の漫画を読んでいるみたいな感じだった。主人公が「ヒーロー」ぽい。扱うテーマがテーマだけに全編底抜けに明るいとはいかないけれど、途中に挟まれる、決して明るくないエピソードも含めて、さわやかに少年を描いている印象がある。


無知が「在日」差別に向かわせるのだとしたら、この物語はそれを取り除くきっかけにするには良い題材にはなるだろうと思う。ボリュームも内容もさらりと読みきれた。