歌い手と歌のイメージ
最近、ラジオでよく『夜空ノムコウ』が流れている。といっても杏里さんがカバーした『夜空ノムコウ』。「カバーが流行だなあ」とぼんやり聞いていたら「あれ、こんな歌だったっけ」と気になった。
私は今までSMAPの歌う『夜空ノムコウ』は恋愛の歌だと思ってた。以前にあの歌詞が生まれたいきさつやなんかをテレビで聞いて以来、すっかりそうインプットされていた。そのときは作詞したスガさん本人がエピソードを語っていたのだけど「恋愛云々〜」と言う話しがあったかどうかは覚えていない。ただ、その解説からはそういうイメージが浮かんだんだろうな。一度そうインプットされたら、同じ歌を聴くと同じ画が浮かぶ。だからずっとSMAPの歌う『夜空ノムコウ』は恋愛の歌をイメージしていた。
それが、杏里さんの歌を聴いていると、ちっとも恋愛の歌には聞こえない。「あれ?」と思って歌詞を読み直してみたら、それっぽくはあるけど決して恋愛と限定する要素はないと思った。杏里さんの歌からはもっと幼くて、拙くて、切実なイメージが浮かんだ。誰かに語りかけるというよりは自分に問いかけるような、恋愛というよりは生きることについて歌っているような。絵本とか少年とか、そういう画。
杏里さんの『夜空〜』が格別に気に入ったのかというとそういうわけではないと思う。とてもお上手だし、心地よい歌だけど、劇的に胸に刺さったからそんなふうに聞こえたといわけじゃない。それでも、歌い手が変わることで歌に対するイメージががらっと覆されることもあるんだなあ。それはやっぱり「歌」というものが、曲や歌詞の良さだけじゃなくて、歌い手の魅力と一心同体だからなんだろう。SMAPの夜空をもう一度聞き直してみようと思う。
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