だから彼らを好きになって、今から何かを好きになる

私がキンキキッズを好きになったのは、彼らのファンサイトがきっかけだった。「彼らのことが気になったからファンサイトを探してみた」のではなくて、「ファンサイトで見かけた、彼らのことを気にするようになった」。それまで私は、テレビのバラエティや音楽番組をあまりみたことがなく、ジャニーズが何なのかもよくわからないような化石人間だったので、潜在的に好きだったという可能性は低い。それでふと思い返してみると、いま私が好きなものの入口としてインターネットはけっこう大きな位置を占めていて、その出発地点がキンキだったのかもしれない。


インターネットを触り始めたばかりの頃は、とにかく何を見たら良いものかもわからずに、たどり着いたサイトからサイトへとリンクを辿っていた。そのなかで出会ったキンキファンサイトのラジオレポやコンレポにはまった。赤と青に色分けされた独特のひらがなまじりの関西弁トークが楽しくて、かわいくて、だんだん意図的にキンキファンのサイトを見るようになった。テレビもラジオも雑誌もコンサートも見ず、彼らの容姿や声を直接しっかりと認識もせず、ただ、彼らのファンがつくったサイトに書き連ねられている文章を見てキンキキッズを好きになった。それは実際にふたりが喋った言葉ではあったけれど、完璧に「そのもの」ではなくて、サイトの管理者の主観が多分に盛り込まれていただろうと思う。だから、彼らそのものを見聞きして好きになったと言うよりは、彼らを好きな人たちの言葉で誘い込まれたんだろうなあと思う。


当時見ていたサイトは、PCを変えたり年月を経たりすることで、ほとんどのURLを失ってしまった。サイト名も朧気だったり、覚えていなかったりする。でも、あのとき見ていたサイトたちの、赤と青の文字が仲良く並んだページの画だけはいつまでも記憶に残っていて、これからも忘れないような気がする。インターネットを通してで友人ができたのもキンキのファンサイトがきっかけだったりするし、今こうしてはてなにいるのも、キンキファンのはてダを読んでいたのがきっかけだったりする。そういう繋がりは、サイトそのものが消えてもキンキ以外の形で残っていて、思わなかったような出会いをもたらしてくれたりもする。新しくできた友人がその人の好きなことを紹介してくれたり、新たな友人を紹介してくれたり。


一方で、いったんそういう繋がりを得たことで、私はインターネットを始めたばかりのような積極性を鎮火させてしまった。もともと新しいものに興味を持ちにくく、表面上だけ眺めて踏み込むことをおっくうがる傾向にあるし、それを自分の良くないところだと思いつつ「興味を持てないものに興味を持つ」というのはとても難しいことだと思っていた。それが最近、もう少し頑張ってみても良いんじゃないかなと思うことがある。頑張るっていうのは違うのかな、興味が持てなくても、とりあえず眺めるだけ眺めてみてもいいんじゃないかと思う心の余地が増えたというか。今はまだ眺めるだけで立ち止まっていることが多いけれど、自分から1歩踏み込んで好きになっていく機会がもうすこし増えてもいい。初めてインターネットに触れて、キンキを好きになったときみたいに。そうすれば、キンキを好きになって良かったなって思ってるみたいな何かがこの世界にあるかもしれない。こういう心境の変化もまた、出会った人とか、人の記したものとか、そういうところから受け取って少しずつ育っていくもののひとつだったりするんだ。