20周年の入口で、彼らが見つけたかもしれない未来

※このエントリは2017/1/10 Twitterの投稿をまとめて加筆修正したものです。


2016年にKinKi Kidsがリリースしたシングルについて考えるとき、『薔薇と太陽』は光ちゃん、『道は手ずから夢の花』はつよしにとって、より大きな意味をもたらしたんじゃないかという気がする。もちろんキンキの楽曲はふたりで歌うものだから、必ずしもきれいに線引きできる訳ではないけれど、このタイミングで出会った曲がそれぞれにKinKi Kidsの未来を示し、いまのふたりを少しでも強くしたのならいいなと思う。

堂本光一が『薔薇と太陽』に見たかもしれない未来

光ちゃんが『薔薇と太陽』について語るとき、TV出演のコメント・雑誌のインタビュー・コンサートのMC、どの言動からも自信と仄かな興奮が見て取れた。あの曲が彼にどれほどの手応えと、KinKi Kidsの可能性を示したのかは一目瞭然だった。

ここに至るまでの数年間、メディア上での彼の言葉をとても複雑な気持ちで聞いた時期がある(これについては今回の本筋ではないから掘り下げないけれど、いずれ文字にすることもあるかもしれない)。

だから彼が最近になって、『日系エンタテインメント!』上で「比較的近年の間にグループの解散を考えたことがあった」と明かしたことについても「そうか、そこまで視野に入れていたか」と思いこそすれ、青天の霹靂だとは感じなかった。むしろ、ここ数年の自分たちの活動をさして「コンサバだった」と表現したのは、露骨な否定表現をしないぎりぎりのところまで切り込んだ言葉に思えて、こちらとしては安堵さえした。

彼の「何かしらの革新を生み出すことができないのであればやめてしまった方がいい」という考え方は、究極のポジティブなんじゃないかと思う。その道は彼自身にとっても諸刃の剣だろうし、それでも必要と思えば選ぶのが堂本光一という人なんだろう。『薔薇と太陽』の、退廃的でありながら力強く情熱的な世界観は、そういった残酷なまでのポジティブさによく似合っている。
だからこそ、『薔薇と太陽』に始まる一連の彼の言葉が今までと全く違うエネルギーに満ちていたことは、私にとって大きな驚きと喜びだった。

堂本剛が『道は手ずから夢の花』に見たかもしれない未来

一方で、一時期のつよしが楽曲の合作に頑ななまでのこだわりを滲ませていたのは、光ちゃんのいうところの「コンサバ」なキンキの状況に対する、つよしなりの手段だったのかもしれない。もちろん一緒に曲を作りたいっていう純粋な欲求もあんるだろうけど。だから、彼がインタビューにこたえる文面を追いながら、いまは「焦らないけど機会ができたら合作もしたい」って気負いなく言える気持ちなのかなと感じるたび、なんだか安心する。

最近つよしが「光一も自分もそのままで一緒にいるからキンキなんだ」って繰り返し口にするのは、「合作したい」っていうのと根っこは同じなんじゃないのかなあ。光ちゃんとつよしから生まれてくるものこそがKinKi Kidsなんだっていう、それだけのこと。

『道は手ずから夢の花』は、アルバム用に用意されていこの曲を光ちゃんとつよしだけがシングルに推したのだという。つよしが、このときのことを「物作りをしている実感もあってちょっと幸福を感じ」たと話してくれて、涙が出るほどうれしかった。合作じゃなくてもキンキで物作りができるんだってつよしが体感できたのは、すごく大きなことの気がして。

KinKi Kidsが見てきたかもしれない過去と、見るかもしれない未来

一方、改めて思い知ったこともある。彼らにとっての「過去」にならない限り、私たちは彼らの進退に関わる部分の本音を聞かせてもらえないんだなあという事実だ。私は、彼らの職業上、自身で提供してくれる以外の「真実」は知らなくてもいいと思っているけれど、それは彼ら自身の意思に基づいているという前提があればこそだ。「嘘はつかない」と言ってくれても、黙っていることはある、それが至極当たり前なのだとしても、ふたりが今後また望まざる停滞に向き合うことがあったとして、どんなふうに力になれるんだろうか。いちファンとしてまだ答えが出ていない自問でもある。

過去に彼らは「みなさんの声が必要です」と繰り返し口にした。それは本当にそうだったんだろうし、それくらいしか言えることがなかったんだろう。わかっていても、言われる側はとても歯がゆかった。私の出せる場所に、出せる範囲で「声」とやらを届けていたつもりではあったけれど、あまりに抽象的でぼんやりして手応えがなかった。もっと具体的な行動や要望の形を示してくれたらいいのに、とじれったく思っていた。

この先ふたりは、私は、あのときと違う気持ちや手段を選べるだろうか。不安はきっとこれからもくすぶり続ける。同時に、いまのふたりを見て期待もする。「KinKi Kidsだからできることがまだまだあるはずだ」と、彼ら自身が信じてくれることが、なによりも心強い。
だから、彼らにその火を灯してくれたように思えるふたつの歌に、感謝するのだ。


年始のコンサートのMC中、ただのおふざけみたいな顔で始まった漫才の題目に『剛と君と光一の結晶』と書いてあったことを思い出す。
あのツアーでいっしょに過ごした時間や表現してきたこともぜんぶ、つよしの言うキンキの物作りの幸福そのものだったならいいな。
「結晶」だもの、彼らがこれから進む20周年の入口で、きっと、きらきらしてる。