奇跡も起きず変身の呪文もないこの平凡な日常に

わたしにとって、環境というのはこころを左右する重要なものだ。ほんとうは環境なんておかまいなしにいつでもバリバリやれる方がいいのだろうけど、あいにくとわたしは環境に影響をうける。だからじぶんの生活環境がわるいと全体的になにもかも悪循環に陥る。「きちんと生活したい」なんてことをよく口にするのもそういうことが原因で、べつに物語の中のようにこぎれいでおしゃれなライフスタイルをめざしているとかではない(もちろん、おしゃれになるならそれに越したことはない)。


環境というのは、単に場所だけをさすのではなくて、いちにちの過ごすし方だとか音楽だとか天気だとか食べるものだとか、そういうものも全部ひっくるめる。いい音楽を聴いたり、おもしろい本を見つけたり、うれしい出会いがあったり、月がきれいだったり、パンがおいしかったり、そういう小さなことで心の持ちようがちょっとだけ変化すると、気持ちがぴしっとする。神聖な気持ち、というのかなあ。だからそんなふうに神聖な気持ちになったときは、ひとつひとつのことをことさら丁寧にやってみたりする。じっくりお風呂に入ってみたり、ゆっくり朝食をとってみたり、寄り道して帰ってみたりする。じぶんで環境の変化をしっかりと確認する。


毎日やるべきことはたくさんあって、やりたいこともたくさんあって、今日も明日もつながっていてなかなか境界はみつからないし、劇的な変身ポイントもみつからない。それでもこういうちいさな環境の変化をくり返してすこしずつでも変身をかさねてゆけたらいい、と思う。